バグの一手

バグだったんですか…

WIREDにこんな記事が出てました。

IBM元開発者「チェス王者にスパコンが勝てたのは、バグのおかげ」
http://wired.jp/2012/10/03/deep-blue-computer-bug/

1997年、当時のチェス世界王者カスパロフIBMのディープブルーが対戦し、ディープブルーが勝利。コンピュータ史上に残る出来事なのですが、勝利のきっかけとなった一手が、実はディープブルー自身のバグによるものだったというお話。

『あの時ディープブルーは次の一手を選択できず、単にランダムに手を打ったのだという』
(リンク先より)

人間で言えば「苦し紛れの一手」というところでしょうか。あーもうどうすりゃいいのかわかんねーもういいやこれで!と打ったら勝っちゃったディープブルー。

完全性だけでは完璧ではないのかもしれない

この話、いろいろなことを考えさせられるエピソードだなーと思いました。
コンピュータというものは、通常であれば、バグなどない完全な状態が求められます。どんなに難しい計算であっても、人間よりも遥かに速くこなすことができる、冷静でパワフルな電子頭脳。人工衛星の軌道計算、地球温暖化による平均気温の推移、混雑や障害にも負けないネットワーク制御、などなど、必要とされる場面は現代では幾らでもあります。あえてコレ、と言うのがめんどくさいくらい幾らでもあります。
ところが、人間を相手にする、人間を模倣する、人間らしさという分野では、完全性だけでは完璧とは言えないのではないだろうかと。
ファジーという言葉が過去のものになって久しいですが、曖昧さや唐突さ、予測不可能性…カオスでいいのか、そういったものが人間には備わっています。いや、人間だけでなく生命に。
それこそが「意思」なのかもしれない。先を先をと読み進み、チェックメイトに追い込むにはどうすればいいか、キングが一切身動きできなくなるように駒を配置するにはどうすればいいか、冷徹に計算するだけでは「コンピュータ」にはなれても、「人間」にはなれないのかもしれない。
未来が予測し切れないのが人間であり、苦し紛れの一手を打つのも人間なんだなあなんてことを思ったりしました。


バグ抜きで対戦しても、ディープブルーが勝ったんだろうか。