徐々に読了

先日買った「あなたの人生の物語」は徐々に読み進み中。
二つ目の「理解」はタイトルの割に書いてあることは難解。その前に読んだ「バビロンの塔」の印象を引きずったまま読み始めると後悔するかもしれない。頭のリセットが肝要。
脳の使い方が普通の人とかけ離れていく主人公の心情を描くわけだから、感情移入はできたとしても思考の流れまで理解するのは難しい話なわけで、ともすれば言葉遊びにしか見えない単語の羅列も一つ一つを吟味しながら読んでいくのは大変だし、それではいけないのかもなと思い途中からはフィーリングでぽんぽん行を進めていった。エレガントに読み進むことはこの物語の主人公がゲシュタルトに魅了されることと通ずる部分があるように感じるので、そういう意味では主人公に近づきながら読めたと言えるかもしれない。
思考が常態とはかけ離れていくという点ではこの後に読んだ、表題作にもなっている「あなたの人生の物語」も同様。ただしこちらの方が超人の思考を解する必要がないだけわかりやすいかも。
ヘプタポッドBについては挿絵など一切出てこないのでその姿は頭の中で想像するしかなく、何となくその様態は曼荼羅っぽいなあと思っていたら実際に曼荼羅という表現が出てきてやはりなと思った。ある意味で“それら”は悟っていると言えるのかもしれない。ルッキンググラスに貼り付いた言語学者たちの中に東洋人はいたのだろうか、と想像してしまった。もっともそれが日本人だったら主人公たちと大して変わり映えのしない心象を示すに留まったかもしれないけれど。むしろ宗教人が介在していたらそれはそれで面白いかもしれない。
東洋的な概念を覗かせつつも、“それら”の知覚は数学的とも言えるのかもしれない。数学の授業を受けてきた中でも一番印象に残っているのが、二点AB間を結ぶ経路Cはどのようなものであってもかまわないという条件。何を学んでいるときに出てきた言葉なのかは覚えていないんだけど。原因と結果に相当する点Aと点B、この座標は不変であって、経路であるCはどのような曲線を描いても許されるが、結果(つまり点Bの座標)を変えることは許されない。つまり経路C は、点Aより出てあたかも自由意志に基づいているようでいながらも点Bという結果に至る役割を演じることになる。
そして人類もまた、経路C以上の何者でもない。生という点Aより出て、死と呼ばれる点Bに至ることは避けられない。捉え方が違うだけで、人類も“それら”も、ともにこの宇宙に生きているという事実には変わりがない。
何となく佐藤大輔の自室には曼荼羅のようなものが満ちあふれているのではないだろうかと全く関連性のない感想を抱いてしまった。
だいぶまとまりが無いな。