望遠鏡を作ってみた

最近夜はなかなか晴れてくれません。日中は陽射しが強いのに…せっかく買った天体望遠鏡も暫く出番無しの日が続いています。
フラストレーションが溜まり気味でしたが、ふと、職場に並ぶ商品のルーペを眺めていて、
「ここで手に入るレンズで望遠鏡くらい作れてしまうのではないか?」
と無謀とも思えるようなことを思い付きました。
ところが、帰宅して早速検索してみると、出てくるわ出てくるわ(笑)。自作望遠鏡は予想以上にメジャーなDIYのようで、沢山の情報が手に入りました。
部品選びにおいて重要と思われる情報をまとめてみると、

  • 対物レンズは老眼鏡、接眼レンズはルーペ。
  • 老眼鏡は度数が弱く、ルーペは倍率が大きいものを選ぶと出来上がる望遠鏡の倍率が大きくなる。

この二つに絞り込めました。
既存のレンズを用いた望遠鏡の設計において知っておかなければならないのは、そのレンズの焦点距離というものです。たとえばルーペで太陽光を集めて紙を燃やしたことのある方なら判ると思いますが、集まった光が一番小さく眩しくなるような紙とルーペの間隔、これが焦点距離だと思っていただければいいかと思います。
望遠鏡の倍率というのは、見たいものに向けるレンズ(これを対物レンズと呼ぶ)と目を近付けるレンズ(これを接眼レンズと呼ぶ)の焦点距離の比によって求められます。
つまり、高倍率の望遠鏡を作りたければ、対物レンズは長く、接眼レンズは短い焦点距離を持ったレンズの組み合わせを選べばいい。ということになります。
なあんだ簡単じゃん、と思いますが、実際にレンズを選んでみようとすると、なかなかシビアな世界が待っていることに気付きました。
ガリレオ・ガリレイが用いていた天体望遠鏡は14倍とも30倍とも記述がありますが、ひとまず欲張って30倍の望遠鏡を作ることにしました。
一般的なルーペの倍率は5倍や6倍といったところなので、接眼レンズには5倍のルーペを想定して計算してみましょう。
ルーペの焦点距離は、

L=0.25/(n-1)

という式で求められます。Lは焦点距離、nはそのレンズの倍率です。ルーペに書いてある5倍というのはだいたい25cmの距離における倍率を記しているのでこういう式になるんだそうです。理由は理解していません(汗)。
で、5倍のルーペの焦点距離を計算してみると、6.25cmであることが判りました。30倍の望遠鏡を作りたければ、この距離の30倍、1.875mの焦点距離を持った対物レンズを選んであげればいいわけです。
先に対物レンズには老眼鏡がいいと書きましたが、メガネレンズの焦点距離はルーペに比べて長めです。しかもメガネレンズの度数というのは焦点距離の逆数なので、焦点距離を求めるのも簡単なわけです。
そこで焦点距離が1.875mのレンズの度数を求めてみると、+0.53Dという結果が得られます。メガネレンズは0.25D刻みで作られているので、近い度数として+0.5と書いてある老眼鏡を買えばいいのか!と思いますが、残念ながらダ○ソーでは+1.0からしか老眼鏡はありません。
それに対物レンズの焦点距離が1.875mということは、完成する望遠鏡の長さもほぼこれと同じになるということを意味します。
私の身長より長いわけで(汗)。
だらだら書いていていけませんが、倍率30倍にこだわる場合、接眼レンズはもっと高倍率のルーペを選ばないと対物レンズに短い焦点距離のレンズを選ぶことができないというわけです。
で、ここで手元に20倍のルーペがあることを思い出しました。接眼レンズを20倍とした場合、対物レンズは+2.5の老眼鏡を使えば30.4倍の倍率を得ることができます。この場合、対物レンズの焦点距離は40cmなので、かなり実用的な長さの望遠鏡が出来上がりそうです。
そんなわけで材料を物色です。老眼鏡はせっかくなら口径が大きく取れるように、既存のメガネの上から取り付けるタイプのものを選び、紙コップで対物レンズ周りを作り、たまたま捨てずにあったFAXの感熱紙ロールの芯とトイレットペーパーの芯を組み合わせることにしました。感熱紙ロールとトイレットペーパーの芯の間には薄手の隙間テープを使えばピント合わせもできそうです。
ところが全くもって想定外だったことに、老眼鏡のレンズが左右で度数に違いがありました(笑)。明らかに左のレンズの焦点距離が長いのです。おそらく度数+2.0のレンズ。本来なら不良品なのですが、たまたま私が買ったというのは偶然なのか神の悪戯なのか。
で、せっかくならこのサプライズを活かすべく、+2.0のレンズで作ってみることにしました。焦点距離は10cm伸びて50cmになるので倍率は38倍ということになります。
そして出来上がったのがこちら。

かーなーり不格好です(笑)。
今夜も雨がちな曇りなのが残念ですが、近所の外灯を見たところ、なかなか綺麗に大きく見えて驚きました。感熱紙ロールの芯が細いので視野が狭まるかと思いましたが、接眼レンズの倍率が大きいせいか、視野いっぱいに景色が映っています。老眼鏡の説明書きにも非球面レンズを匂わせる記述があったので、意外と悪くない組み合わせだったのかもしれません。
凸レンズを二つ組み合わせたケプラー式の望遠鏡なので、景色は逆立ちして見えています。なので、接眼レンズを10倍のルーペx2枚に変更して、逆立ちしないで倍率今のままになるような改修を施すかもしれません。
あとは紙筒なのもどうかと思うので、程良い太さの塩ビ管でも探してみようかなあ…。