自己、

丸二日近く経過しているわけですが、決して黙殺しているとか無視しているとかではないのです。
嫌になります。自分が。
差し出がましいのではなく、下手なのかな。嫌いなのかな。よくわからない。
励ますということが。
どう声をかけよう、かけたい、かけなければならないと思って言葉を出そうとしても、ああこんなことを言っても当人にとって何になるのか、ただ不快にさせるのではないのか、というループに陥って結局言葉に詰まる。


日頃、心に置いていることがあります。
体験したことのない事柄について批評したり、何かを決めつけてはいけない、と。
でもこれは逃げているだけなのかもしれない。
なぜなら自分の人生で出くわしたことのないものについては何も言わないと言っているようなものだから。


私の持っていたPEG-T400が嫁いでいったid:ubonoさんの日記に昨日の未明の私のエントリ宛にリンクを貼ったエントリがあります。
やっぱり言葉が出ませんでした。
ショックで言葉が出ないとか、そういうことではないのです。
ただ何を言えばいいのかがわからないんです。
体験したことがないから。
どんな気持ちになるのかが判らないから。
ご本人が書き記しておられるところから、想像はできるかもしれません。
だけどそれは本当に私が同じ境遇であった時に感じることそのものなのか?
自殺するほど思い詰めるだろうか?
全く気にしないで生きるだろうか?
その間のどこに自分はいるのだろうか?
あるいはその外側か?


私の手のひらは汗っかきです。
製図の授業では、書いた端から線がかすれ、用紙と線とのコントラストが徐々になくなっていき、湿って書きにくくて困りました。幸いというか描くのが速かったので何とかこなしていましたし、かまわず私に製図を手伝えと言ってくる同級生もおりました。
多汗症と診断されるほどではないと思います。滴るわけではなく、湿っているだけですから。それでも藁半紙なら一分で湿って色が変わってきますし、書類仕事もそれとなく気を遣わないとすぐにインクが滲んだりしてしまいます。


手を繋ぐことも昔は嫌なことでした。
いや、恐怖でした。
キャンプでジェンガを踊る時、隣に気になっていた女子が廻ってきそうになると、緊張で余計に汗が出てきます。
全てがこの手のひらのせいというわけではないですが、あまり人付き合いが上手くない性格に多少は関与していると思っています。
今でも仕事で釣り銭を渡す時なんかにお客さんと手が触れると、一瞬自分の視線が上向いて相手の表情の変化をつかみ取ろうとしてしまいます。
嫌がられてないかと。
そんなことばっかり気にしてきたんで、場の空気の変化には妙に敏感だったりもしますが…。


そんな私の手も悪いことばかりではありません。
レジで釣り銭を出す時はものすごくやりやすいです。
レジ袋を開く時も一瞬です。スーパーでこっちが客な時も同じ。
逆に乾燥している時…というか「普通」の時…などは「おい早く湿ってくれよ」と手を揉んで神経を刺激したりしています。
乾燥肌の人からは、羨ましいとさえ言われます。
以前であれば「阿呆か」と思ったことでしょう。
手のひらの皮を剥ぐか、手首ごとぶった切って交換してやろうかとさえ思ったかもしれない。
でも今では「あー、この手が羨まれることもあるのかあ」と、あっさりしています。
ほんの数年前からは考えられないくらいに。


私の場合はこんなふうに実用的(おい…)なコンプレックスでとどまっていますから、こんなことを書いても何にもならないかもしれない。
こんな手じゃ女の子と付き合うのもなあ…と成人してからも思っていたけど、気が付けば自分そっくりの息子がPCデスクの裏でもぞもぞ這い回って配線を狙っている。
今まで付き合ったと言えるだけの関係になった女性にも、思っていたほど嫌われることはなかった。
手も繋いでもらえた。
でも、それだけで人生が救われたような気がした。


こんな体験を開陳したところで、己に(勝手に)課した条件をクリアしているかどうかわからない。
ただの自己満足かもしれない。
余計なお世話なのかもしれない。


ああ、やっぱり言葉が出ないよ。
謝らんでくださいよう。




同一、相違は実態がしっかりしているけれど、普通なんてものは無いようなもの。
だからこそ、自分が普通だと思っているものに反する物事、存在には反発し、嫌悪し、憎悪する。
そんなことをここ数日で強く感じています。


私にだって「これが普通」という基準はあります。
先天的なものを忌み嫌ったり、見た目だけで短絡的に相手の性質を決めつけたり、相手の心を軽々しく扱ったり、ただ悲しみだけを生み出すような行為に荷担したり…。
これらは皆、私の持つ基準においては「異常」です。
ええかっこしいで言ってる訳ではないですよ。


うちの息子が四肢を持たずに産まれてきていたとして、果たして「かわいい!」と言えるかどうか自信はありませんが…。